ガンスリンガーガールを読んで


GUNSLINGER GIRL 1 (電撃コミックス)

GUNSLINGER GIRL 1 (電撃コミックス)



毎日1冊風呂場で読んでいたが


仕事に一区切り付いた勢いで,


昨日,7巻あたりから一気に読んでしまった。


ペトロニウスさんとか海燕さんの


年始のラジオは聴けていない。


予断が排除された状態で愉しませてもらいました。




単なる読者として心動かされた。


理屈なんか考えたくない勢いで世界に浸ってきた感じ。


それくらい,私には物語体験がまだ浅くて,


きっとよくあるものでもまだ感動できてしまう


愉しめてしまう状態なのだろう。


物語の構造から分析する作業はしていない。


とりあえず,トリエラへの感情移入の度合が強かった


なぜだろう。姉御肌だったからかな。


面倒見のいい,自分のことも手一杯,一生懸命の証。


常に全力投球。この辺りに共感したのかもしれない。


その最期の言葉が「ばかな人」「でもうれしい」かぁ


うーん。思うことはいっぱいあるなぁ。


ちょっとまだ,単なる読者としての感想は


消化・昇華しきれない。





さてさて,法律家として想起したことは2つ。


問1。いまの死と10秒後の死は違うのか


ヘンリエッタとジョゼッフォの最期のシーン。


瀕死の状態でいずれ死ぬ運命。


ヘンリエッタに殺されるのも悪くない


叶わぬ恋なら愛する人を殺して自分も死ぬ


そのような動機で殺し合う。


この場合に,瀕死の状態からそのまま死ぬのと


それを早めて自ら選んだ方法で死んだ場合に


その死はやっぱり意味合いが違うのかということである。


ジョゼたちは,自分たちのコントロール下で


自らの選択で殺され合ったわけで,


瀕死のダメージを与えた敵によって殺されるのを


排除した(ゆえに報われた?)という文脈である。


しかし,刑事法的には,あくまで


敵の引き金が死を招来させたわけで。


敵に殺人既遂罪が問われることになる。


死は敵によって意味づけされてしまうわけである。


ふたりは自らの死を早めただけで,瀕死の攻撃からの


因果関係からは逃れられていない,と評価する。


つまり,瀕死のけがで10秒後に死ぬのと


けがの直後お互いに殺し合った場合の死は,


法的には同義の死と捉えるわけである。


この辺の議論は,法学徒も苦手である。


ロジカルに詰めれば詰めるほど,感情的に納得できない。


そんなキャンパスライフを思い出した。


実は,この話は死刑と終身刑の関係も想起させる。


死刑はいまの死,終身刑は未来の死。


早いか遅いかの違い死かない。


絞首するか飼い殺すかという手段の違いともいえる。


死刑制度反対論に代替刑として終身刑をあげる人がいる。


終身刑だって受刑者を殺している。


縄を使って殺すか,寿命を使って殺すかという話。


終身刑受刑者も,自分がどうやって死ぬかという


選択肢を奪われることに違いはない。


結局自らの命は国家のイニシアティブで決まるのだから。


しかし,死刑と終身刑に違いを見いだしているのなら,


やっぱりヘンリエッタたちの死にも


意味づけができると考えるべきなのだろうな。




問2。意思の死と生物的な死は,どちらが重いか


義体を観た時に,


「生身の身体じゃなくて可愛そう」


と考えるのか


「条件付けと記憶喪失で可愛そう」


と考えるのか,である。


これも刑罰論的に議論ができる。


通常の懲役刑等では更生可能性がゼロ,つまり,


出獄したらどうせすぐに犯罪をしてしまう人間がいる。


そんな犯罪者から社会秩序を守るときに


犯罪者にどんな刑罰を加えるべきか,である。


(よく言われるのが,レイプ趣味のある犯罪者とか)


洗脳して真人間にするのと,死刑にするのでは


どちらが人道的な刑罰なのか,ということである。


洗脳するということは,自己決定の主体である意思の死。


自分の死の選択権もクソもない。


生物学的に死ななければ人道的といえるのか。


この辺の議論である。


法律家としては,生命が最優先の価値だ,


と答えざるを得ない。


まぁ個人的には正直よく分からない。


義体が思う死の恐怖よりも記憶を失う恐怖の方


意思主体の死の恐怖の方が,大きいように観えた。



余談として,このお話の何が残虐なのか。


たぶん,少女の生物学的な命を救う一方で


意思主体としての命は


記憶消去・条件付けで奪ってしまい,


更地に生まれた新たな人格は暗殺兵器として消尽される


という,このシステムのせいなのだと思う。


つまり,私は,生物学的な命を最優先とは思っていない


のかもしれないなー,だなんて。




GANSLINGER GIRL,


考えるきっかけもいっぱいあったし,


戦闘シーンに勢いもあったし,


画も比較的好みであったので,大満足でした。


MPすり減ったので,みなみけで補充しようかな。